「おい、南條?」
急に呼ばれ、ビクッとした。
そして、まだまだ癒えていない胸の傷が悲鳴を上げる。
あたしは恐る恐る顔を上げ……
そして、俯いた。
見なくても分かっていた。
あたしの前の席は柏木さんの席。
あたしをふったにも関わらず、柏木さんはいつもと変わりなくあたしを呼ぶ。
「南條、どうしたんだ、その菓子」
柏木さんは目を輝かせてあたしのデスクに積まれたチョコレートを見る。
やめてほしい。
いつも通り、接しないで欲しい。
少しは気まずい顔とかしてよ。
じゃなきゃ、なんだか虚しいじゃん。
あたしだけ、ドキドキしていて。