名甲シャークスは関西が拠点の球団。父方のおじいちゃんがそっち方面の出身で、今も現役の年季が入ったファンなのだ。

そんなおじいちゃんの影響で、私も昔っからシャークスファンなんだけど。



「なかなかさ、ホーム球場までは遠くて試合観に行けないんだよ。だからたまに近くの東都ドームでやる、ビジターの試合を観に行くんだけどさあ」

「ビジター?」

「サッカーでいうアウェーみたいな」



野球に詳しくないらしいむっちゃんに、さりげなく総司がフォローを入れる。

ま、そういう総司は小中高大とサッカー一筋でしたけど。社会人になった今は仲間とフットサルに燃えているらしい。


私は自分の中から溢れる悔しさを逃がすように、ぎりりとジョッキにかけた手を握りしめた。



「昨日もね、仕事終わりに速攻着替えて観に行ったわけよ。長年のライバルである東都ウィングスとの試合をね……!」

「コイツ、会社のロッカーにレプリカユニフォームと応援グッズと選手名鑑常備してる猛者だから。あ、選手名鑑ってのは、プロ野球全球団の所属選手のデータが載った本のことね」

「すみれちゃん、見た目清楚系美人なのにことごとくギャップぶちかまして来るなあ……」



男ふたりがなんかコソコソ話してるけど、とりあえず今は言わせておく。

ちなみに選手名鑑なら、小さいサイズのやつも常に通勤用バッグの中に入ってます。私の愛読書です。