それでもまわりからは、イケメンだなんだと持て囃されているらしいこの男。小さい頃からの腐れ縁な私からすると、ただの口うるさい舅みたいなものだ。



「そういえばすみれちゃん。さっきお店入って来たときやたら荒れてたみたいだけど、何かあったの?」



目の前にイカの七輪焼きが乗った皿を置いてくれながら、むっちゃんが訊ねてくる。

私は一瞬固まって、それからべしっと思い出したように片手でテーブルを叩いた。



「そうだ、突然の総司の襲撃で話し忘れてた!」

「俺は宇宙人か」



総司の小言はスルー。だってまたフツフツ怒りがわいて来たんだもん。

不機嫌顔で若干身を乗り出し、私はカウンターの向こうにいるむっちゃんを見上げる。



「むっちゃん、昨日のナイター観た?!」

「ナイター? ってプロ野球の?」

「そう! シャークス対ウィングスの試合!」



威勢良くうなずく私を見て、彼は視線を店内にあるテレビに向けた。



「まあ、お客さんが途中からチャンネル合わせてた気がするけど……俺はちゃんと観てないなあ。すみれちゃんはシャークスファンなんだっけ」

「うん、そう。昨日の試合ね、私ドームに観に行ってたんだ」

「え、そうなの?」



目をまたたかせるむっちゃんに、拗ねた顔で首を縦に振る。



「うん、ひとりで」

「ひとりで?! それはまた、筋金入りだねぇ」

「そうなの。子どもの頃から好きなの」