「あっはは! ほんと、きみらは仲良いねぇ」

「ただの腐れ縁なだけっすよ、コイツは」



言いながら総司はふたつともジョッキを受け取り、ほい、とそのうちの片方を渡してくれる。

なんだかんだ言いつつ私にもこういう気遣いはしてくれるんだよね、総司って。



「ありがと」

「それじゃ、ビールも来たし。まだ週のど真ん中だけどカンパーイ」

「いえーいカンパーイ」



カチン、とふたりきりでジョッキを合わせ、ビールをのどに流し込む。

暦は6月も半ばにさしかかろうかというところ。本格的な夏はまだ先とはいえ、1日働いた後の冷たいビールは最高においしい。

ぷは、とジョッキを口から離して、私は思わず満面の笑みを浮かべた。



「はああおいしい! やっぱ仕事終わりのビールさいこ~」



言ってから、小鉢の砂肝もひとくち。うんうんやっぱりおいしい。



「ここでオシャレなナッツをつまみつつ『あたしー、お酒弱くってぇ~』とか言って甘ったるいカクテルをちびちび飲むくらいの女子力を見せられないのが、深町 すみれ(ふかまち すみれ)24歳にいつまでも彼氏ができない要因だと思われるんだけどどうかねむっちゃん」

「う、うーん」

「隣りのスーツ、うるさい」



長ったらしい嫌味なセリフを一度も噛まずに言い切るその男に、正面を向いた顔は微笑みのまま冷たいひとことを投げつけた。

だいたい、総司に女子力見せるだなんてもったいないだけだと思うんだけど。私だって素を見せる相手は選ぶわ。