「三等分、いくら?」

「いらねーよ。広香が置いてった分は今度会ったときにでも返しとけ」

「あ、」



反論する隙も与えず、あっさり会計を済ませた総司はのれんをくぐって外に出てしまった。

むっちゃんに手を振って、その背中を追う。



「あの、ごちそうさま」

「うん」



ボディバッグを肩にかけつつうなずく総司。

どちらともなく歩き出すけど、ふたりの間に会話はない。


……なんであんたが、そんな不機嫌そうな顔してんの。

怒りたいのはこっちだよ? あんな、勝手に私宛の電話出られたあげく、相手に失礼なこと言って切られてさ。


積もり積もった不満は、声になってくちびるからこぼれ落ちる。



「……訳わかんない、総司。こないだから、あんたちょっと変だよ」



私たちの間には数メートルの距離があるし、ずいぶん小さなつぶやきだった。

それでも前を歩く総司には届いたらしく、奴がぴたりと足を止める。


振り返った総司の顔はやはり、明らかにイラついていて。



「訳わかんねぇのはそっちだろ。なんでいきなり、久我 尚人と親しくなってんだよ」

「それは、いろいろあって……というか、今その話は関係な、」

「あるっつってんだろ!!」



突然怒鳴るように返され、びく、と身体が震えた。

大股でこちらに近付いてきた総司が、片手で乱暴に私の右肩を掴む。