「俺もさっき、ニュース観ましたよ。すごいなー久我さん。さすが、俺らとは住む世界が違いますね」

《……どうも》



褒めてるはずの総司の言葉は、どこか相手を貶しているようにも聞こえて。

さすがに私はそこで、この状況をどうにかしようと身じろぎする。



「ごめんなさい久我さん! ちょっと総司、あんたいい加減に」

「あーそうです。すみませんねぇ久我さん」



こちらの抵抗をものともせず、総司がさらに私の肩を抱き寄せた。

至近距離で、冷ややかに笑う幼なじみの横顔を見る。



「今俺ら、ふたりで飲んでるんで。邪魔しないでもらえます?」



言い放った瞬間、相手の言葉を待つことなく総司が通話を切った。

あまりのことに固まっている私の目の前へと、多少乱暴な動作でスマホを置く。

一瞬遅れて、私は猛抗議だ。



「あ……っあんたなに考えてんの??! 失礼極まりないにもほどがあるでしょバカじゃないの!!?」

「うるさい。バカはおまえだ」

「な……っ」



席を立ちながら冷たく一瞥をくれる総司のセリフに、さらにカッと頭に血がのぼる。

そうして奴は自分のボディバッグを持って、そのままスタスタ歩き出した。



「すみませーん、お勘定お願いしまーす」

「はーい」

「ちょ、ちょっと」



くるりと総司が振り返る。ムカつくほどの呆れ顔で。



「ボサッとすんなよ。行くぞ」

「~~ッ」



言いたいことをとりあえず今は飲み込んで、私も椅子から立ち上がった。

レジで会計をする総司に、あわてて追いつく。