……久我さん、今日もヒット打ったんだ。

すごいな。ほんとに、すごいひとだ。



《久我選手の勝ち越しタイムリーの後もウィングスは得点を重ね、ソルジャーズに8対4で勝利しました。ウィングス、単独首位をキープです》


「……あはは、すごいね。さっき久我さんがタイムリー打った初球って、結構難しいコースに、」

「──やめろよ」



知らない人みたいな、低い声。

こちらが反応する前に、腰を浮かせた総司が私の後頭部を掴んで自分の方へと振り向かせた。

不機嫌そうに顔を歪めた総司と、目が合う。



「アイツのこと、そんなふうに褒めんな」

「、え。総司──」



しゃべりかけた瞬間すぐ近くで着信音が聞こえて、ビクッと肩がはねた。

ついさっき、広香のときとデジャヴだ。今度は誰のだと思ったら、まさかの私。

あわててテーブルの上のスマホを手に取った私は、ディスプレイを見て目をまるくした。


表示されてる名前は、【久我 尚人】。

……うそ、このタイミングで。でもああ、そっか、今日はデーゲームだったからきっともう家には帰ってるんだ。

でも、……ええっと、今は。


画面を見つめて固まる私を不審に思ったのか、総司も向かい側からスマホを覗き込んできた。

久我さんの名前を確認した瞬間、さらにその形のいい眉がひそめられたのを私は見逃さない。