「交友関係って……あのなあ俺は、」

「ごっめーんふたりとも~~!!」



総司のセリフをぶった斬るように、広香がテンション高くテーブルに戻って来た。

微妙な雰囲気になっている私たちなんて、気にもとめていないらしい。そうして彼女は椅子には戻らず、自分のハンドバッグを手に取った。



「ほんとゴメンね! 私今狙ってる彼にお誘いされちゃったから、ここで帰るわ!」

「えっ?! ちょっと広香、」

「あっ、とりあえず私の分はこれで! じゃあねーん」



もはや親友なはずの私の声すら届かない。ぺしりとテーブルに五千円札を載せ、足取り軽やかに広香は去って行く。

華奢な後ろ姿が消えた出入り口の引き戸を、呆然と見つめた。



「相変わらずだなー広香。二十代も折り返し地点だってのにあの恋愛体質は変わらないか」

「いや……むしろ拍車かかってるわ……」



ため息をついて、浮かしかけた腰を再び椅子に落ち着かせる。

総司も、くっついては離れてを繰り返している広香の華麗なる恋愛遍歴はだいたい把握しているのだ。呆れ顔でビールジョッキを口元に運ぶ。



「ほんとおまえら正反対だよな。なんで今日まで友人関係続いてんのか謎」

「それいろんな人に言われる……でも、自分と違うからこそ、尊敬したり居心地よかったりするとこ、たくさんあるんだよね」



苦笑しながら私が言えば、ふっと総司も笑う。

……こういうとこ。たとえ直前までケンカしてたとしても、そのすぐ後には笑い合えたりするのって……幼なじみの、いいところだと思うんだよなあ。

ムカつくことも多いけど、それ以上に一緒にいて楽なのは、総司だって同じだ。