「ど、」

「──ちょっと、そこの人」



どうしたの、と問いかける前に、背後からかけられた言葉。

振り向いた私は、驚いた。後ろに立っていた人物が、予想外にデカくて威圧的な男だったから。

背の高さはもちろん、なんていうか、放っているオーラがすごい。気を抜けば、そのオーラに飲まれてしまいそう。


それはさておき、なんか感じ悪いなこの人。Tシャツの上からもわかる筋肉質な身体と、日に焼けた肌。

夜だし、ていうか室内だってのに、なぜか目元はサングラスに覆われていて。

それでもわかる私を見下ろす整った顔は、今は無表情。


……あ、嫌いなタイプ。

瞬時にそう判断した私は、不審な表情を隠そうともせず思いっきり眉を寄せてその男を見上げた。



「あぁん? なによあんた」



口から出たのは、喧嘩腰のそんな言葉だ。

隣りにいる総司が、やれやれといった表情でため息をついているのが視界の片隅に映る。うるせぇ売られたケンカは買うべきでしょ!



「さっきから、ウィングスの久我のこと悪く言ってんの聞こえてたんだけど」

「なに? あなた、ウィングスファン?」



ていうか、久我の悪口言ったのは最後の方だけですけど! やだやだこれだから天下のウィングスファンさまは!!

かなり偏見が混じった考えで目の前の男を睨みつけていると、予想外に、その男はふっと口元を緩めた。