「すごいな、さすがすみれちゃんのお兄さん」

「ふふん、さすが私の兄でしょ!」

「ほざけ。橙李(とうり)兄ちゃんはおまえとは比べものにならないくらいカッコよかったわ」

「ほんともうあんたはいちいちムカつくなあああ」



腹立たしさにその首を絞めようとしたのに、あっさりかわされた。総司マジムカつく風邪でもひけ。

そしてヤツはさらに、私の神経を逆撫でする言葉をぶちかましてくるのだ。



「つーか、昨日の試合はさあ。俺も今朝スポーツニュースでハイライト観たけど、9回表のあの場面フライを取ったのが久我だったのに、タッチアップでホームに向かった三塁ランナーの判断が甘かったと思うんだけど」

「うっ」

「久我の強肩は、ご存知の通りじゃん。ランナーの堀江は俊足でもないのに、あそこは走るべきじゃなかった」



あーあーあー、コイツも野球観るのは好きな方だからそこそこ知識あって、こういうとき耳が痛いことズバズバ言ってくるんだよなー。



「ほ、堀江、がんばって走ってたし!」

「おまえは小学生の運動会見に来たおばちゃんか。盗塁刺されてる場面もあったし、走塁判断に関しては課題が残るなあシャークス」



えらそうに言い切って、「むっちゃーん、ビールおかわり~」なんてのんびりビールを追加注文する総司。

ああもう腹立つこの男! そしてその件は昨夜近くの席で応援してたおっちゃんたちとの間でも出た話題だから余計に!