初めて肌に触れる風。
木々の色。
そのどれもが私にとっては新鮮だった。


「すごい・・・。」


『はやく行くぞ。』


うん、とうなずいて手をひかれるまま歩き出した。
太陽が登りはじめている。


急がねば。
明るくなれば軍に見つかりやすくなる。

一刻もはやく、この森の奥へ逃げなければならなかった。
私と両親の気持ちは正反対の場所にあったのだろう。




ミシッ、ミシッ。




大地を踏む音が響く。

両親はスタスタと行ってしまう。
私は小走りでついていくしかなかった。



だけど、私は楽しかった。
何しろ赤子のころ以来、岩の隙間で生活してきたのだ。


外を知らなかったのだ。

空気がやけに澄んでいる。
登ってきた太陽がこんなに暖かいなんて知らなかった。


だけど、一体どこに行くんだろう?


もう、ずっと歩いてる。

少しずつ疲れてきた。