吹き荒れる風。
その中に声が響いている。



「・・・・・・。」


・・・・・・赤子はいないか?


・・・よく探すんだ!!


恐ろしい声はしだいに小さくなった。


そして声が聞こえなくなったとき、父は私にもう大丈夫、と告げた。


「何だったの・・・?」


母の顔は強ばっていて、父もまた同じような顔だった。


『・・・どうする。』

『・・・ここにいるのは危険だわ。』

『・・・あぁ、明日の夜明けにここを出よう。』

『えぇ、そうね・・・。』

「・・・どうして?どこにいくの?」


私は自分の生い立ちを知らなかった。

それだけに、先ほどの軍を見て両親がなぜ怯えているのか分からなかった。


だけど、初めてこの岩の外へ出れるということに喜んでいた。


『・・・大丈夫。心配するな。』

「う、うん。」


そして、夜は過ぎて夜明けが近づいた。


『よしっ、行くぞ。』

「うん!」


初めての外の世界。


なんて広大な・・・。


森の息吹を体全体で感じた。