「うーん。やっぱり、なんか聞こえたよ。」

『・・・気のせいよ。』

 


・・・殺せ!!親子を殺せ!!



『・・・・・・はっ!!』

母がスープを煮る手をとめた。

『・・・どうしたんだ?』

『・・・なんか、外が騒がしい・・・。』

「ね、聞こえたでしょ。ふふっ。」

『・・・ちょっと待て。』



・・・赤子はどこだ!

・・・探せ、探せ!!



風の中にいつか聞いた声がよみがえる。


父は一瞬にして全身から血の気がひいた。



『おい、静かにするんだ。いいか、パパがいいって言うまで何も話しちゃダメだ。』

「・・・どうして?」

『どうしてもだ。いいな。』

「分かったよ・・・。」


私は何が起きているのか見当もつかなかった。
だけど、父と母の青ざめた顔を見て話してはいけないと自分に言い聞かせた。


・・・・・・殺せ、親子を!!


・・・殺せ!!


・・・赤子を見つけろ!!


だんだん声が近づいてきた。