そして、森の声が聞こえた。


ーゆっくり休んでいきなさい。


優しく囁くような声だった。
普通なら聞こえないのだろう。

この時からだったと思う。
世にある全てのものに精が宿っていることを知ったのは。
そして彼らの声を聞く力が目覚めたのも。


休んでいるうちにウトウトと眠たくなってきた。
朝早くから歩いて、あまり寝れなかったのだ。

寝そうで寝ないのを繰り返していた。
パパとママも少しは疲れていたみたいだ。


だけど、察する力が強かった私は気付いた。
森の様子がおかしい。

相変わらず静かではあるけれど、殺気のようなものを感じるのだ。


ーお逃げなさい!


そして、また森の声が聞こえた。


ハッとした次の瞬間、木々の隙間から一本の矢がパパの胸を貫いた。