翌日ー

いよいよ信都さんたちが今日、卒業する。

卒業式を迎え、周りがざわついている。

そんな中、私は体育館に行かず、屋上にいるのだ。

いわゆる、サボり?というやつだ。

授業をサボったことは無いが、こういうイベントは頻繁にサボる悪い癖がある。

ふぅ、小さく息を吐いた。

暖かくなってきた陽気に思わず眠気を誘われる。

そして気づけば私、

屋上で寝転がっていた。そしてゆっくり目を閉じた。

目を開けたとき、何故か信都さんが横にいた。

恥ずかしすぎる…寝顔見られた!?と言うより、信都さんはいつからいたのか、私に上着をかけてくれてた。

そして私の髪を優しく撫でていた?!

私は慌てて起き上がった。

「おはよう?人の卒業式参加せずこんなとこでお昼寝とは、いい根性してるね?」と怖い笑い顔で信都さんは言ってきた。

「ごめんなさい」と謝れば、

「じゃぁ、キスしてくれたら許してあげる」って耳元で囁かれた。

そんなのズルい。けど…逆らえなかった私は先輩の口にチュッと口づけした。

けど…「足りない」という信都さんは更に深いキスを私にした。

しばらくの間、お互いの体温を感じながら熱いキスを堪能した。

「ほら、そろそろ帰ろ?」と信都さんは言うと、しれっと立ち上がる。

私は動けずにいると、手が差し出された。

「帰ろ?」って。覗き込むように。

まだ一緒にいたいのに…この手を握ってしまえば帰らないといけない気がする。

私は迷っていた。けど…素晴らしいタイミングで、屋上のドアが勢いよく開いた。

バーン!

私たちは硬直した。

なんとそこには息を切らした高見さん弟と光がいた。

「こんなとこで何してんの?」と高見さん弟は言う。

「お取り込み中?」と光は聞いてくる。

「次期生徒会の人間が卒業式という行事をサボるとは…中々いい性格してるよね?」と黒い笑みを浮かべながら言ってくる高見さん弟。

「…サボりって珍しいよね?」と光は優しくしてくれる。

「先輩方が卒業するの、辛くて…だからサボりました」と私は素直に言う。

「恋人なんだから、いつでも逢えんだろ?」と何故か少しキレ気味の信都さん。

「けど…もう毎日みたいには逢えない…」と私は反論する。

「だからって、あのなぁ、俺も忙しいんだよ?けど…お前に逢うために探し回ったんだ。気持ち察してくれ」と高見さん弟は言うのだった。

そうだったんですね。それで少しイライラしてたわけか。

「卒業おめでとうございます」と笑顔で言ってみた。

ありがとうって言ってるけど、あんまり嬉しそうじゃないよね?

「また、笑って逢いましょ?今までありがとうございました。たくさんお世話になって」と私は言って深々と頭を下げた。

「君のこれからの人生に、期待してるよ」と高見さん弟は笑ってくれた。

そして、そのまま屋上を出ていった。

私はその背中を無言で見送った。

涙が出てきた。先輩と高見さん弟と過ごした毎日は楽しくて、とても大切な青春の一ページだった。

そんな二人とももうお別れ…

胸が締め付けられるように痛んだ。

「大丈夫だよ」そう優しく高見さん弟は抱き締めてくれた。

いつでも逢えるんだよ?って。

私は信都さんの胸を借りて涙を流した。

「俺、先帰ってるね。また明日ね!」と光は言って去っていった。

気を使ってくれたのだろうか。

また二人きりの屋上に戻った。

けど…響くのは私の鼻を啜る音だけ。

静まる屋上で信都さんに抱き締められたまま。

しばらくして私の涙は止まり、ようやく帰ることになった。

信都さんと手を繋いで私たちは歩き出した。

寄り道もせず、無言で歩き続けて家に着いてしまった。

「またな。連絡するから」そういうと信都さんは去っていった。