深町がアリ地獄の中にハマっていく様を見ていると、口元が緩んでくる。

男って愚かな生き物よね。

ううん、仕方がないのよ、きっと。

あたしの色気には、誰も勝つことなんてできない。

もしかしたら、今のあたしにできないことなんてひとつもないんじゃない?

恐いわ、美しすぎる自分が!!

「何してんの? 早く行こうぜ」

空に浮かんだ月を見上げながら自分に酔いしれていると、自転車を置いたまま歩きだしていた深町が、後をついてこないあたしに声をかけてくる。

「あ、うん」

我に返ったあたしは、小走りで彼の元へ駆け寄った。