プイッと向こうをむいて、自転車の鍵をポケットから出す深町。

「冷たいなぁ。せっかく再会したんだから、もうちょっと喜んでくれてもいいじゃない」

そう言い返すあたしは、彼の自転車のハンドルに手をかけて、すぐに帰らせないようにした。

一度、家に帰っていたあたしは今、黒のワンピースを着ていて、甘い香りの香水を漂わせている。

上目使いで彼を見つめ、たっぷりつけたグロスを見せつけるように、にっこりと微笑んだ。

眼鏡越しの彼の目は、無愛想ながらも胸の開いたワンピースを意識しているみたい。


「仲良くしようよ」

柔らかい口調で囁くあたしは、予想通りの反応を見せる深町を心の中で笑っていた。