袋を受け取る太一は、中に入っている本を見て顔を歪める。
渡したのは、昨日、あの店で買った大人の文庫本。

「乱れる女……」

本を持つ太一の側で、直子は口元を引きつらせながらつぶやいている。

「昨日のお土産」と答えるあたしは、太一の反応をジッと見た。

「こんなのいらねぇよ」

太一は口を尖らせながら、文庫本を袋の中に戻していく。

あたしたちの前だから興味がないように振る舞っているけれど、さっき太一は表紙の絵を見たとき、ちょっとにやけた顔をした。