小学生のとき、深町を階段から突き落とそうとして、逆に足を滑らせ骨折をしたあたしを思い出したのか、直子はしかめっ面で聞いてくる。

「大丈夫だって。今度は怪我をするようなことはしないから」

そう返すあたしに、直子は「何をするつもりなの?」と作戦を聞いてくる。

身を寄せて小声で教えようとしたとき、隣のクラスの太一が教室に入ってきた。

「美和、英和の辞書ある?」

太一が現れたことで、あたしたちは深町の話題を中断した。

「あるけど、6限目が英語だからちゃんと返してね」

そう言って辞書を渡すあたしは、鞄から出した青いビニール袋と一緒に差し出した。

「何これ?」