あたしは鞄の中からペンケースを出し、中に入っているボールペンを手に取った。

「忘れた? この顔」

鼻の下にボールペンの先を当てて、小さなほくろを書くあたし。

すると、深町は「あ……」と口を開けた。

「やっと思い出した? あんたの推理は正解。確かに、あたしは弥生ちゃんと美緒ちゃんに仕返しを頼まれてる。だけど、それだけであんたに近づいたわけじゃないの」

ボールペンを持ったまま腕を組むあたしに、唖然とした表情の深町は小さな声で「鼻くそ」とつぶやいた。

「そうよ、あたしはあの“鼻くそ”よ!! あんたがつけたあだ名のせいで、あたしの小学校生活は最悪だった。小さくて目立たないほくろなのに、みんなから笑われて、卒業する頃には、なぜかあだ名が“くそ”に変わってた!!」