口を尖らせるあたしは、持っていた花束を上目遣いでふざける彼の顔に当てた。

「いてっ! 目に葉っぱが刺さったじゃねぇか、この性悪女!」

しかめっ面で文句を言ってくる彼の名は、及川太一。

陸上部のエースで背が高く、黙っていればかっこいい男なんだけど、口が悪くてすぐあたしのことをからかってくる。

あたしの本性を知っているのは、直子と太一のふたりだけ。

まぁ、このふたりはなんだかんだ言いながらも、あたしの本当の姿を人に言ったりしないし、いつも一緒にいてくれるから、付き合っていて楽なんだけど。