「ここで、ずっと待ってたの?」

心の中でガッツポーズをしていると、深町は申し訳なさそうにそう聞いてきた。

「あ……、はい」

本当は近くのファーストフード店で時間を潰していたけれど、健気さをアピールするためにあたしは嘘をつく。

「そっか。……じゃあ、ご飯でもご馳走するよ」

そう言って、彼はあたしの手から鞄を取り、自転車のかごへ入れた。

「いこっか」

自転車を引きながら先を行く深町は、立ち止まったままのあたしに優しく声をかけてくる。

美容のために10時までには寝たいと考えていたあたしは、少し戸惑ったけれど、仕方なく彼の後をついていった。

「せっかくいい感じに騙せてるのに、ここで断ったら、深町の熱も冷めちゃうかもしれない」と思ったから。