鞄の中から携帯電話を出すあたしは、画面に表示されている時計を見る。

「どこで時間を潰そっかな?」

周辺をきょろきょろ見渡しながら、あたしは予定どおりに行動を進める。

あいつは、あたしが百瀬美和だと気づいていないようだった。

なら、次は……。


午後9時。

外はもう真っ暗で、小さな星が散りばめられた空には、まん丸の月が浮かんでいる。

「あ、あの……」

ペットボトルのお茶を飲みながら駐車場で待機していたあたしは、店から出てきた深町に控えめな態度で駆け寄った。