「アリガトウゴザイマシタ」

この店は出入り口のドアの内側にセンサーがあるのか、コンピューターの音声に見送られるようになっているらしい。

「どういたしまして」

ため息をつきながら返事をするあたしは、手にした青いビニール袋の中をそっと覗く。

こんな文庫本なんか買って、何やってんだろ、あたし……。

「お父さんが探している」と言っても、深町は苦笑いを浮かべていた。

絶対、あたしが読むと思っているに違いない。

「はぁ……、こんなはずじゃなかったのに。次の行動に移りづらいし……」