「どうして泣いてんの?」

下唇を強く噛み、真っ赤な顔で涙を流す父親に問いかける。

振り返ると、篤紀は口元をヒクヒク動かしながら固まっていた。



お父さんに呆れたあたしは、篤紀を連れて家を出る。

キスされたことを考えているあたしと、お父さんにバレたことを気にする篤紀。

家屋と電柱しかない殺風景な住宅街を歩くあたしたちは、終始、無言だった。

「今日はもう帰るわ」