何とか、この状況から逃れたかった。

じゃないと、ドキドキし過ぎて、頭や胸が破裂しちゃうかもしれないから。

けれど、彼はあたしの手に自分の手を重ね、立ち上がれないようにしてきた。

「まだあるよ」

そう言って、篤紀は自分のコップを見せてくる。

「もうなくなるじゃん」

目をそらして、無理やりでも立とうとした。

グイッと引っ張られた腕。
姿勢を崩したあたしは、彼のひざに手をついた。