「……いただきます」

両手を合わせて、彼も手前に置かれたフォークに手を伸ばした。

返事をしないあたし。
気まずい空気が、部屋中に広がった。

息が詰まるほどの沈黙に耐えきれなかったのか、篤紀はハァッとため息をつき、フォークを皿の上に置いた。

「確かに弥生のことは好きだった。で、お前が考えているとおり、俺はそんな状態で他の女と付き合ってたよ」

篤紀は真っ直ぐあたしを見て、正直に話し始める。

しかめっ面になったあたしから目をそらし、彼は続けた。

「……忘れたかったんだよ。他の女を好きになりたかった」