「ごち、そうさま……」

歯切れの悪い口調で、あたしは礼を言った。

「どういたしまして」と返す、篤紀。

「近所の映画館、正月でも空いてるらしいんだ。何か観にいくか?」

使わずに済んだ財布を巾着袋の中になおしていると、彼は背伸びをしながら聞いてくる。

「……う、うん」

戸惑いながらもうなずくあたしは、心の中で「彼女」という立場を、改めて実感していた。