柔らかに「そうですか」と言いながら、彼はまたダンボールを持ち始める。

軽く頭を下げて、再び3階へ行こうとしたあたしは、何気なく腰を曲げる彼の胸元に目を向けた。

「あっ!」

青いエプロンにつけている名札を見たあたしは、思わぬ展開に驚き、ポカンと口を開けてしまった。

「え?」と顔を上げる彼。

変に思われないように動揺を隠そうと、あたしは急いで名札から目を外し、側にある小説を手に取った。

「あ、ここにありました。……探していた本」

にっこり微笑んで、その本の表紙を彼に見せる。