大きなダンボールを抱えた彼は、細い黒ぶちの眼鏡をかけていて、にっこり優しげに微笑んでくる。

「あ、えっと……」

いっそのこと、この人に深町はどこにいるのかと聞いてしまおうか。

でも、探していたことが本人にばれたら、せっかく立てた計画が全部パーになってしまう。

「あ、自分で探せますので大丈夫です」

ダンボールを足元に置いて、一緒に本を探そうとしてくれている彼に、あたしは両手を横に振りながら笑顔で断る。

計画では、偶然に出会う形がベストなの。

出会ってからのことは、あいつの反応に合わせたふた通りのパターンを考えている。

あたしのことを覚えているか、覚えていないかで、対応を変えるつもり。

だから、この人に聞くのはよそうと思った。