振り返った彼は、首をかしげてキョトンとした顔をする。

「着物!! せっかく着てきたんだから、ほめてよ」

この日のためにいっぱい買い物をして、朝も早くから起きて準備してきたんだから、「似合ってる」とか「可愛いじゃん」の一言くらいあってもいいと思う。

「……」

自分の肩からずれ落ちたマフラーをかけ直し、まじまじとあたしを見つめる篤紀。

カールの大きさを4段階に分けて、丁寧にまとめ上げたヘアスタイル。

和服にも合うよう、おとなしめに仕上げたけれど、色気のあるメイクは自信があるの。

それに見て、この晴れ着!

グラデーションがかかった色合いと、キラキラ光るラメ。

お母さんに頼んで、奮発してもらったんだから。