「もういいよ」

そろそろ離れなきゃいけない、と思ったの。

そっと腕を放す、あたし。

「いちいち聞き直すなよ」

突然、掴み返された腕。

背を向けていたあたしが振り向くと、深町はもう片方の手で眼鏡をかけ直しながらつぶやいた。


「好きなんじゃねぇの?」