帰らせたくなかったから、今度は鞄を投げた。

深町は腰をおさえて、立ち止まる。

冷たく「聞こえてただろ」と返された。

何も言えなくなったあたしは、手を出して「鞄」と囁いた。

「自分で拾え」

「やだ」

「俺もやだ」

「拾って」

「嫌だ」

何度言っても、彼は鞄を拾ってくれない。