視線を逸らしてなかなか答えない彼は、上着のポケットに手を突っ込みながら、そばへ寄ってくる。

真っ正面に立たれたあたしは、思わず顔を伏せてしまった。

「お返し」

彼はポケットから手を出して、あたしの顔の前に何かを見せた。

「……あ」

目の前に差し出されたのは、あのピンクのストラップ。

あたしはポカンと口を開けたまま、彼に目を向ける。

「まだとれてなかっただろ?」

無表情で聞いてくる、彼。