声を出して呼び止めたかった。

けれど、めいっぱい走ったせいで、のどはカラカラ。

「い…ってぇ」

頭に手を置きながら振り向く、深町。

右足を上げたまま、息を切らして壁に手をつくあたしは、口の中にたまったつばをゴクリと飲む。

彼は自分の頭に投げられた靴を見つめ、「何?」と問いかけてきた。

「はぁ……はぁ、待ちなさいよ」

「待ってるじゃねぇか」

やっと声が出せたのに、呆気なく返される。