「あ、どんな映画が好き? 俺、美和ちゃんの趣味に合わせるよ」

ねぇ、もしかして……あたしのことを待ってたの?

深町のことばかり気になって、話しかけてくる男にちゃんとうなずけない。

「先に、ご飯でも……」

「ごめん! 用事、思い出した!」

深町が角を曲がったとき、あたしは居ても立ってもいられず、大声で謝った。

「え、ちょっと……美和ちゃん!」

走り出すあたしを引き止める声。

でも、もう立ち止まることも、振り返ることもできないの。

今のあたしは深町に追いつくことしか考えられない。