「お待たせ」

深町の目の前で、あたしは男子のそばへ駆けつける。

「映画でも見にいこうか」と、嬉しそうに話しかけてくる相手。

校門から離れるあたしは、うんとうなずきながら後ろを見た。

「……え」

目が点になる。

彼は弥生ちゃんを待たずに、ひとりで帰ろうとしていた。

向こうへ去っていく後ろ姿を見つめるあたしは、隣で話しかけてくる男の声を、ちゃんと聞くことができなかった。

「でね、美和ちゃんとデートするって言ったら、クラスの奴らが羨ましがってね」

どうして、ひとりで帰るの?

弥生ちゃんを待ってたんじゃないの?