「死ぬかと思った……」

パッと手を放すと、直子はひざに手をついて息を整える。

脅したことで、彼女は「すっげぇ気になるし」とぼやく太一に、あだ名の話をすることはなかった。


「あれ、定期ねぇの?」

駅に着いたとき、太一は切符を買うあたしを見て、きょとんとしていた。

「あるよ」と鞄から出した定期券を見せるあたしは、券買機から出てきた小銭を財布の中へ入れる。

改札に切符を通して、あたしはいつもと違うホームへ向かった。

「今からどっか行くの?」と直子に聞かれ、足を止めたあたしはにっこり微笑む。