案の定、深町は棚と棚の間で作業をしていた。

目があったとき、あたしは下唇を噛みながら、傘を持ち直す。

彼は、突然現れたあたしに何も言わず、静かに本の整理を続ける。

驚きもせず、平然とした態度で……。

「弥生ちゃん、彼氏とうまくいってないみたいよ」

後ろにある棚に傘をもたれさせ、あたしは胸の下で両腕を組む。

口にした名前に反応したのか、彼は一瞬、手の動きを止めた。

だけど、動揺を隠すかのように、持っていた本をぎこちなく棚に置いていく。