ムッとしているあたしを不審に思ったのか、太一は苦笑いを浮かべている直子に問いかけた。

「んとね、実は……美和の初恋の相手なの」

チラリとあたしの顔を見た直子は、太一の耳に小声で囁く。

「バカなこと言わないでよ!! どうして、あたしがあんな男のことを……」

聞こえた言葉にカチンときたあたしは、直子の腕を引っ張って大きな声で否定した。

「好きだったじゃん。休み時間とかずっと見てたし」

「好きじゃないわよ!! あんなの恋のうちに入らない!!」

何度も違うと言ってるのに、昔から直子は「深町は美和の初恋の相手でしょ」と決めつけてくる。