にこやかに微笑んではいるけれど、無理しているのがバレバレだ。

血の繋がっていない人たちと一緒に住む。

親でもない人を父と呼び、知らない男の子が兄になる。

あたしはそんな経験をしたことがない。

だから、今は何を言っても軽はずみなものになる気がした。

「あー、こんなところにいた! 弥生、5限目の英語、テストあるんだって!」

何て言おうか考えているとき、向こうから美緒ちゃんが友達と一緒に駆け寄ってきた。

「あ、美和先輩、こんにちわぁ! もう弥生ったら、先輩を独り占めして……。一緒にご飯を食べるなら、あたしたちも誘ってよぉ」

挨拶してくる彼女たちに笑顔を返しながら、チラッとと弥生ちゃんに目を向ける。

「ごめんごめん」

さっきまで重く沈んでいた彼女は、もう明るく元気な女の子に戻っていた。