あたしにも兄がいるけれど、あんなふうにムキになってはくれないと思う。

うちのバカ兄貴なら、きっと「お前、浮気されてたぞぉ」って軽く教えてくれるだけだもん。

妹のために真っ赤な顔をして怒鳴るところを見て、あたしは深町篤紀という人間を少しだけ見直した。

あそこまで大事にしてくれるお兄ちゃんがいるなんて、ちょっとうらやましいよ。

そう思ったから、この話をすれば、弥生ちゃんの気分はよくなると考えていた。

けれど、彼女は微笑むどころか、反対に表情を硬くする。

「……兄はあたしのことを嫌ってます」