太一はおどおどする直子を見て「何かあったのか？」と聞いてくる。

「ううん、別に。っていうか本当に最悪だね、この人」

そう答えながら、あたしは美緒ちゃんの側へ歩み寄り、手にしていた携帯電話を彼女に返した。

非協力的なあたしにがっかりしているのか、携帯電話を受け取る彼女は残念そうな顔をしている。


「いいよ」

小さな声でつぶやいた。

「え？」と顔を上げた彼女に、あたしは優しい笑顔を見せる。

「可愛い後輩にこんなことを言うなんて、許せないもん」

そう告げると、美緒ちゃんは涙を拭い、満面の笑みで喜ぶ。