深町篤紀は「今のあたしが完璧な女にこだわるようになったのも、すべてこいつが原因だ」と言っても過言ではないくらい、忘れられない思い出を作ってくれた男。

携帯電話を持つ手が、怒りで震えてきた。

「美和、落ち着いて。同姓同名かもしれないじゃん。ほら、弥生ちゃんとあいつ、全然似てないし」

険しいこの表情を見た直子は、冷や冷やした目であたしを見ている。

「田中や山田とかじゃあるまいし。深町篤紀って名前が、たくさんあるわけないでしょ」

落ち着かせようとする直子ににっこり微笑むあたしは、開いていた携帯電話をパタンッと閉じた。