「デブの男だったんです!!」

目をうるうるさせていた美緒ちゃんは、その言葉を最後にワンワン泣きはじめた。

その台詞を聞いたあたしは思わず笑ってしまいそうになり、震える口元を手のひらで隠した。

「兄は、自分の学校のモテない男子をその喫茶店に呼んでいたんです。美緒を紹介すると言って」

泣きわめく美緒ちゃんの代わりに、事情を説明する弥生ちゃん。

「なんて野郎だ!」

「弥生ちゃんには申し訳ないけど、お兄さんって最低な男ね」

太一と直子は、弥生ちゃんのお兄さんに激怒する。

ていうか、ここ笑うところじゃないの?

あたしには、ネタにしか聞こえないんだけど。

怒るふたりの隣で、あたしは必死に笑うのをこらえていた。