あたしはそれを無視して、テーブルの隅に置かれている紙ナフキンを1枚取り、濡れた口を拭いた。

「……好きなわけないでしょ」

遅れて、返事をする。

無駄になった紙ナフキンをテーブルの端に置いた深町は、まじまじと眺めてくる。

しかめっ面になるあたし。

彼は視線を落として、「それは残念」とほほ笑んだ。

ざ、残念って……どういう意味よ?

聞けない言葉が、頭の中をグルグル回る。

もしかしたら、ご飯に誘ってくるイコール俺のことが好き、って思われているのかもしれない。

「好きじゃないからね!!」

誤解されたくなくて、もう一度、念を押した。