「何よ? 文句ある?」

多分、深町は振り回されたことを不満に思ってるんだろうな。

何か嫌味なことを言われると思ったあたしは、目を細めて問いかけた。

すると、体を前に倒していた彼は、口の端をクイッと上げて、微笑みながら態勢を戻していく。

「いや、そういうところ……ちょっと羨ましいなって思った」

目の前にあるのは、憎たらしい笑顔。

いつもと変わらない表情なのに、なぜか胸の奥がグンと締め付けられる。

「……あ、そ」

動揺を隠そうと、水をいっぱい飲んだ。

だけど、熱くなる頬はすぐには冷めなくて……。

どうしちゃったの、あたし。

何度もおしぼりで拭いているのに、手に汗がにじんでくる。