「やっと起きた」

ふうっと深いため息をつき、やれやれと言うかのような顔をする彼。

「……え、あたし……寝てた?」

痛みを感じながら体を起こし、「ベンチの上だったんだ」と心の中でつぶやく。

「気を失ってた」

ベンチの上にあった足を下ろすと、深町はそこに腰かけて、呆れた態度で返事をした。

そして、うんざりした口調で説明をはじめる。

どうやら、あたしはサッカーボールを顔面で受けて、そのまま後ろへ倒れこみ、気を失っていたらしい。

「そういえば、卵みたいなものが……」

記憶を辿るあたしは、その説明を聞きながら、それらしい光景を見た感覚を思い出す。

視野を覆ったあれはそのボールだったのか、と納得することもできた。