グッと掴まれた腕。

「まだそんなことしてんのかよ?」

眉間にしわを寄せて、しかめっ面をされる。

「痛いって」

手を振りほどこうとしているものの、太一の手は力を増していく。

「もう気が済んだだろ? いつまでやるつもりだよ?」

そう聞いてくる太一の後ろで、靴をなおす直子は素知らぬ顔。

いつもなら、間に入って「まぁまぁ」とか言いながら、太一をなだめてくれるのに。

……うんざりした。

どうして、ふたりはここまで反対してくるのか?

むかついたから「別にいいじゃない」と怒鳴って、腕を振り払った。

そりゃあ、1ヵ月前、森本の件でふたりに迷惑はかけたけど、それとこれとは別。

深町のことでふたりを巻き込むつもりはないし、迷惑はかけてないんだから、ここまで反対される意味がわからない。