「とりあえず、話だけでも聞いてやれば?」

ポリポリと頭をかきながら、側にある花壇に腰掛ける太一。
直子も「困ってるみたいだしね」と言って、ここから動く気配はない。

もー、そんな言葉がほしくて、ふたりの顔を見たわけじゃないのに……。

ふたりがそう言ったことで美緒ちゃんは安心したのか、掴んでいたあたしの腕をパッと放して笑顔になった。

「あたし、弥生のお兄さんのこと……好きだったんです」

美緒ちゃんが理由を話し始めると、直子と太一はまじめに聞く体勢になった。

そんなふたりを呆れた表情で見下ろしていたあたしは、心の中でブツブツ文句を言いながら、仕方なく話を聞くことにした。